子供たちのほとばしる好奇心に応えようと色々考えておもちゃや絵本を準備しても、親の意図に反してあんまし遊んでくれないなってちょっと悲しくなることがあります。
せっかく買ったんだから使ってほしい
でた、もったいないオバケ
でもよくよく見てみると、ただその存在感がないがために子供に気付かれてないのでは?と疑わしパターンもあるようです。実験的におもちゃの置き場所を変えてみたら効果てき面、目立つところに置いてあるおもちゃに目が行き、昨日まで触ってなかったのに急に触るように。
こんなんあったんかーい!って感じ
子供たちの変化に対する敏感さは毎度驚かされるところですが、そんな新鮮さもさることながら、やはりおもちゃや絵本は見せることが重要なんだなということに気付かされました。
そこでわが家にある子供たち用の本、すなわち絵本・図鑑についても、これまで少し目立ちにくくかつバラバラに置いてあったものを一つにまとめて探しやすくできるよう、子供たち用に大きな本棚をリビングに置くこととしました。
その効果は抜群で、この本棚を導入してからというもの、子供たちはすっかり絵本を読む機会が増えた模様。毎日起床後は本棚前に直行しますし、1歳娘(当時)も含めて一日に1時間以上は本に夢中です。
本記事では、そんな素敵大容量本棚をDIYで作る方法についてお示しします。
どんな感じに仕上がったか
まずは完成状態をご覧ください。
調達資材とコスト、所要時間
おうち型本棚の製作にあたって調達した資材とそのコストをお示しします。
項目 | 仕様 | 必要数 | 調達 数量 | 小計 (税込み) | 調達先 | 適用先 |
---|---|---|---|---|---|---|
ラジアタパイン集成材 | 1820×910×t25mm | 設計参照 | 1枚 | 5,970円 | ホームセンター | 棚板 |
ラジアタパイン集成材 | 1820×910×t18mm | 設計参照 | 1枚 | 4,980円 | ホームセンター | 外枠 |
棚柱 | 長さ455mm | 2組 | 2セット | 956円 | ホームセンター | 可動棚 |
棚受 | 4個入り | 4個 | 1セット | 200円くらい | ホームセンター | 可動棚 |
長蝶番 | 長さ150mm | 2個 | 2個 | 796円 | ホームセンター | 屋根 |
木ねじ | Φ4.2×L50 | 12本 | 1セット | 400円くらい | ホームセンター | 固定棚組み立て |
木ねじ | Φ3.3×L45 | 3本 | 1セット | 400円くらい | ホームセンター | 屋根部組み立て |
木ねじ | Φ3.1×L16 | 12本 | 1セット | 400円くらい | ホームセンター | 蝶番取り付け |
ニス | ウレタンカラーニス | 0.2Lくらい | 0.7L | 余りを使用 | ホームセンター | 木材塗装 |
ペンキュア | ベージュ (セミグロス) | 適量 | 1本 | 660円 | ホームセンター | 金具塗装 |
トータル約15,000円。同じくらい大容量でちょっとかわいい子供用本棚の相場を見ると2万円くらいはするようですので、コスト的にも悪くない印象です。
製作所要時間は私の場合は3~4日かけて少しずつ作業しましたが、まとめると丸一日で終わる程度で、比較的手軽にできるDIYと考えます。
塗装の乾燥時間があるので待ち時間が長いです
製作手順
大まかな段取りは以下の通り。
- 要求の整理
- 設置場所
- 寸法
- 外枠・棚板用木材
- その他副資材
- 木材表面をヤスり、ニスで塗装
- 金具を塗装
- 外枠+固定棚+屋根
- 可動棚
- 揺さぶりテスト
設計
まずは設計作業です。どんな本棚が欲しいかという要求を整理し、それを実現させるために必要な機能・性能を洗い出します。
どんな本棚が欲しいか
最初にわが家が欲する本棚を思い描いてみます。
- 子供用絵本をすべて収納できる
- どんどん増えることも想定してなるべく大きく
- 検索しやすく、取り出しやすい
- 背表紙の見易さに配慮
- 取り出しやすいよう高さにも余裕を持たせる
- 1歳でも取れるような低さ
- 目に付きやすい
- 設置場所で配慮
- 部屋に溶け込む雰囲気・サイズ
- 白系の色味
- 必要最小限のサイズ
これらの要求を満足する本棚設計を検討していきます。
設置場所
わが家ではリビング+中洋室が子供の遊び場なので、目に付きやすく触りやすいようにこのどちらかに置きます。
中洋室は4cm厚の極厚ジョイントマットを敷き詰めた上、ボルダリングウォールや巨大姿見、平均台などで遊べるようにしているため、比較的体を動かすスペースという位置づけ。
そのため設置場所はリビングとして、兄妹別々に興味が出たときに本に触れられるよう配慮します。
マスキングテープを壁に直接貼って本棚形状を描いてみると、イメージ確認に便利です。
主要寸法
主要寸法としては以下のとおり設定しました。
箇所 | 寸法[mm] |
---|---|
横幅 | 1,135 |
奥行 | 300 |
高さ | 1,420 |
それぞれの寸法設定について、以降に考え方をお示します。
横幅
なるべく大容量の本棚とすべく、設置場所めいいっぱいの幅としています。ぴったりサイズ。
DIYの真価
とは言え、製造誤差で出っ張ってしまうのは絶対にイヤだったので、ぴったり寸法から5mm小さめの設計値としました。
結局設計値ぴったしで作れてしまったので、右側を5mm空けています
奥行
圧迫感の排除、遊びスペースを極力残す等を目的に、本棚の専有面積はなるべく小さくしたいところ。そのため奥行も必要なギリギリの大きさに設定します。
わが家の本の中で一番奥行があるのは100かいだてのいえシリーズ。
これが約30cmあるので、奥行きはこれに合わせてぴったりサイズの30cmで決定です。
高さ
水平方向の寸法(横幅・奥行)が決まったので、残る設計寸法は高さのみとなります。ここで考慮するのは以下。
- 背の高い本が入って、かつ取り出しやすい
- 収納する本の数を想定し、棚数を決める
わが家にある本の中で最も背が高いものはピクチャーペディアで31cm弱。
これを取り出すことを想定した時に、本の上に手がすんなり入るよう4~5cm程度の余裕が持てるように設計します。
このように大きな本は荷重の観点でも最下段に配置し、中段以上にはもう少し小さい本を置くことを想定します。結果、下2段の内部高さは66cmとしました。
また将来的に本が増えていった時にも全ての本を収納できるだけの棚数を設けることを考えましたが、本棚を高くし過ぎると圧迫感が出てイヤだったので、えいやっと3段に決定してしまいました。
結果的に、図鑑入れて約200冊もまだまだ空きスペースあるので、容量としては十分と考えています。
外形
せっかく子供用の本棚を作るので、なんか楽しい感じにしたいなと考え、屋根付きのおうち型としました。
とは言え私のDIY技術だと複雑なことはできません。屋根を任意の角度にするのは難儀しました。
そこで制約として頂部は90度に固定。これであればねじで簡単に固定できますし、見た目もすっきり美しくなります。
ここを直角にすることを決めたら、あとは頂部の位置を決めます。残された設計自由度はこんな感じ。
円周角の定理だったかしら。懐かしいわね
このとき、屋根と外枠は中途半端な角度を持つことになりますが、長蝶番で固定することで解決します。
わが家の場合はなんとなくバランスが良さそうな30°/60°/90°の三角形となるように寸法決定しました。
棚板の厚み
本はすごく重いので、棚板の剛性が足りないと重みに負けて曲がってしまいます。特に今回は横幅を約1.1mと長くとるので、たわみやすい形状です。たくさん本を載せてもたわまない程度に棚板の剛性を確保する、すなわち適切な厚みを設けるため、事前に設計計算しました。
計算方法の詳細はこちらを参照下さい。
荷重条件
本の重さを見積もるため、一番重そうな図鑑をサンプルとします。ここでは息子の一番好きな恐竜の図鑑で単位長さ当たりの重さを算出します。
厚み28mmで重さが1.3kgなので、単位長さ(厚さ)当たりの質量は46.4g/mm。棚の幅(内寸)は1100mmなので、棚に図鑑をびっしり並べたときの荷重は51kgということになります。
めちゃくちゃ重くないですか!?
単位長さ当たりの重さ46.4[g/mm]を単位長さ当たりの荷重に換算すると0.455[N/mm]。
強度・剛性計算
いつもの計算サイトを利用します。今回の場合、棚板はねじ止めする固定棚と棚受に乗せるだけの稼働棚がありますが、強度・剛性の評定となるのは可動棚(両端単純支持)となるのでこれで計算します。
材料はここでは代表的な木材としてSPF材を仮定し、その材料データは以下を使用しています。
奥行300mm、厚さ25mm、長さ(幅)1100mmの棚板に51kgの荷重が等分布に作用する(0.455[N/mm])として計算します。
- 最大応力:2.2 [MPa] 〇(< 強度14.2[MPa])
- 最大たわみ:2.2 [mm] 〇
発生応力が材料強度に対して十分小さく、またたわみ量も2mmなので許容範囲でしょう。これで良しとします。
ちなみに、もうひとつ薄い18mmで計算してみると、発生応力は4.2MPaなので持ちますがたわみ量が約6mmとなり少し大きいかなと考え、安全側に25mmを選定することとしました。
なお、今回の計算では遊具と違って動的荷重を考慮していません。ゆすぶったりはせず、本は静的にそっと置くだけですので、これで良いです。
地震時には重力以上のGが負荷されますが、上記の通り材料強度に対してまだ余裕があるので、計算上は7倍の加速度(7G)がかかっても壊れない設計となります。
棚板は地震で壊れてもいいですけどね
棚板以外の外枠は、本の重さによる曲げ荷重が負荷されないので薄くてもよく、もうひとつ薄い18mmを選定しています。
可動棚
中段は高さを変えられるようにするため、既製品の棚柱・棚受を使って可動式とします。
私が選定した棚柱は、ホームセンターに売っていたこちら。
極力薄いものが良かったのでこれにしました。耐荷重も(忘れてしまいましたが)十分だったのでこちらに。
ネットで買う場合はこのあたりが安くて良さそうです。
要は耐荷重が問題なければどれでも良いです。今回の想定荷重が棚ひとつで51kg、これを棚受4つで受け持ちますので、一つ当たり約13kgとなります。
実際は3点支持になることが多いので要注意です
おそらくだいたいの棚受が耐荷重40kgとかなので、問題ないかと思います。
あとはこの棚柱の厚さを考慮して、可動棚の長さを決定しましょう。わが家の場合は内寸1100mm(=固定棚長さ)、棚柱の厚みが4mmだったので、可動棚長さは
1,100mm – 4mm × 2つ = 1,092mm
より短くないと入りませんので気を付けて下さい。
私はここを見落としていて、再度ホームセンターに行って切ってもらう羽目になりました
私は余裕を見て1,085mmでカットしましたが、これがちょっと失敗。
余裕み過ぎて隙間が大きくなってしまいました。ここの隙間は大きすぎると棚受の耐荷重が下がってしまうので、あまり隙間を設けたくないところ。
みなさんはもう少し攻めて、余裕は1~2mmにされることをオススメします。
資材調達
設計が完了し「作れそう!」となったので、資材調達に入ります。寸法や金具は決めているので、まだなのはどの木材にするかくらいです。
外枠・棚板用木材
リビングに溶け込んで、かつ愛くるしい見た目とするため、
- 色白
- 優しい木目
の木材を探しました。そして選定したのがこちらのラジアタパイン集成材。
集成材ですが木目が優しくてかつパッチワーク模様になっててちょっとかわいいんですよね。
これの厚み25mmと18mmを調達し、ホームセンターで必要長さに切ってもらいました。
長蝶番
屋根と外枠を固定するための長蝶番を選定します。
150mmのものを選びました。奥行きが300mmなのでえいやっと半分あれば良いかな程度の選定理由です。屋根の自重を支えるだけの金具なので、ゴツイものは不要です。
小さい蝶番を端っこに2つずつ配置するのでも十分と思います。
とにかく存在感をなくせるよう、薄いものを選定しました。
研磨・塗装
いよいよ施工に入ります。木材は表面や角をヤスって優しくしたあと、表面をニスで塗装します。接合用の金具も、目立たないよう木色(ベージュ)に塗装します。
ヤスリがけ
ボルダリングウォールを作ったときに手に入れたB&Dマルチツールのサンダーが便利すぎるので、これを使って表面・角をサンディングします。
最後に仕上げで#400の紙やすりを用います。安定のダイソー品で十分です。
今だったら、杉無垢天板作りで手に入れたダイソーのハンドサンダーを使うかもしれません。
角もラクに作業できちゃうので、電動工具をお持ちでない方はこちらがオススメです。
ニス塗り
ヤスリがけが終わったらニスを塗っていきます。
元々の素材が持つ木目・色味を大切にしたいので、つや消しクリヤーを選定。ボルダリングウォールで信頼と実績を積んだ一品です。
これを2度塗りします。
一度塗りのあと、表面がボツボツしますので、#400のサンドペーパーで軽くヤスってきれいにした後、2層目に行きましょう。
金具の塗装
木材の接合に使う金具、今回の場合は長蝶番ですが、これもあらかじめ塗装しておきます。
塗装の目的は目立ちにくくして存在感を極力消すためなので、木材と同じような色の塗料を選定します。
ギンギラギンは目立ちすぎるものね
塗装に選んだのはラクそうなペンキュア。これめちゃ便利で、本棚の後もバスケットリングや雲梯作りでも重宝しました。棚柱の塗装でもこれを使用。
木材に似た色でかつセミグロス(半つや消し)なのが選定ポイントです。目立ちにくい。
長蝶番に戻って、これに二度塗りで塗装したんですが…
マスキングテープくらいの粘着力で簡単に持っていかれるくらい、簡単に剥がれてしまいました。これは当時は分からず、後から雲梯を作るときに調べてわかったんですが、ステンレスにはプライマーを塗らないと塗料が乗らないんですね。
反省です。みなさんはお気を付けください。
#この後、バスケットリングやうんていを作る中で金属塗装技術も習得したので、記事にまとめました。
組み立て
あとは組み立てるだけ!大きいので地味に大変ですが、ひとりでできます。
棚柱の取り付け
外枠の内側に棚柱を取り付けていきます。取り付けは棚柱に付属するねじで。位置は両側でぴったし合うようによーく測って決めてください。
じゃないと傾いちゃいます
棚柱塗装
長蝶番と同じくペンキュアを使って塗装していきます。
塗り終わってから気付きました。
なんで取り付ける前に塗らんかったんや
うん、その方が圧倒的にラクです。マスキングの必要ないですから。
そしてこの棚柱も長蝶番と同様もれなくステンレス製ですので、塗装が完全に乗っていないと思われます。今のところ剥がれていないので良しとしていますが、これから作られる方はぜひプライマーを先に塗装することをオススメします。
このプライマーは雲梯作りで実績があるのでオススメできます。
私の失敗が誰かの糧になれば幸いです
木材の結合
いよいよ最終段階、各木材を結合していきます。各所、板の厚みに応じてねじを少し変えました。
固定箇所 | 径 | 長さ | 考え方 |
---|---|---|---|
①外枠×固定棚 | Φ4.2 | 50mm | 固定棚厚さが25mmあるので太めかつ長め |
②屋根 | Φ3.3 | 45mm | 屋根板厚さが18mmなので①より少し細め |
③長蝶番 | Φ3.1 | 16mm | 長蝶番の穴径に合うサイズ 屋根板厚さ18mmを貫かない長さ |
組み立ての順番は自由度高いですが、③の固定の時だけ工具が入りにくいので要注意です。とか言いながら私は最後に取り付けましたが、大丈夫でした。
これで完成!だったんですが、先述の通り可動棚の寸法が間違っていて、棚柱と干渉して入らなかったので、このタイミングで再度ホームセンターに持って行ってカットしてもらいました^-^;
みなさんはお気をつけて
完成・テスト
可動棚がない状態ですが、完成後のテストとしてゆさゆさしてみました。
圧迫感を防ぐため補剛材はなしとして木ねじ数本での固定のみとした設計のため、横倒れモードの剛性に不安がありましたが、揺さぶりテストの結果頑丈なことが確認できたので、合格です。
おうち型本棚の作り方まとめ
簡単に作れるかなーと思って始めた本棚作りでしたが、作ってみると色々と失敗がありました。そんな失敗も赤裸々に残しましたので、本記事を参考にしていただければ少なくとも同じ過ちは犯さずに作れるかと思います。
家の中での大半の時間を過ごすリビングに大容量の本棚を据え付けて以降、子供たちはすっかり絵本を読むことが習慣化されました。
そんな費用対効果バツグンだった本棚の導入後、キャパがまだまだあるということで絵本や図鑑を次々に買い足す親がいたこともまた事実。
本が子供の成長に与える好影響は歴史が証明しており、わが家としてはそれを信じてどんどん投資する方針です。大容量本棚という受け皿も完成しましたし、わが家ではこれからも適宜本を追加していきたいと思います。
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